2015年10月26日月曜日

六甲全山縦走路のデータ

六甲全山縦走路については,以前書いた六甲全山縦走路の距離についてや,後日書いたGPS 経路データから求めた誤差について地理院地図で六甲全山縦走路の登山道が修正されていたも参考にして欲しい。

追記)後日地理院地図で六甲全山縦走路の登山道が修正されていたに記載したが,地理院地図上で六甲全山縦走路のデータが変わっていたので,対応するデータのページを修正しておいた。
 今年も六甲全山縦走の季節がやってきた。 今年(2015年)は,11月23日の神戸市主催の六甲全山縦走大会に当選したので,晩秋の六甲全山を縦走をする予定である。 実は,六甲全山縦走大会に向けて,というか,六甲全山縦走大会は人が多くて渋滞する,という話しなので,事前に(10/24に)六甲全山縦走してみた。 さらに言うと,昨年(2014年)の秋と今年の春で数回,六甲全山縦走をした。 六甲全山縦走は,公式には 56 km,GPS による実測では 45 km の長丁場である。 累積の高度差も,登り,下りともに 3500 m を越える(GPS と地理院地図の高度データによる)コースである。 六甲全山縦走は,この 45 km を一日で歩くことを言う(と思っている)。 トレランの人たちは5時間だの7時間だので走り切るみたいだが,普通の人は12時間~14時間ぐらいかけて歩き通す感じのルートとなっている。

 そんな六甲全山縦走路だが,何度か歩いてみて,ルートがどのようになっているのかをデータとして知りたくなった。 そこで,地理院地図上にルートを描き,地理院地図の高度情報から,六甲全山縦走路の距離と高度の情報を表にしてみた。


クリックで別サイトを参照します。別タブ(ウィンドウ)で開きます)

この表に従って,六甲全山縦走路について書いておこうと思う。

 表を見てもらうと,左側に縦に六甲全山縦走路の通過地点が書いてある。 緑色の行は,縦走の際にいろいろな意味でポイントとなる地点である。 例えば,縦走の際に12時間を目標にすると,須磨浦公園から鵯越駅までで3時間,摩耶山掬星台までで7時間,東六甲縦走路分岐までで9時間半,が目安になる。 また,分割して歩く際にも,これらのポイントを使って,須磨浦公園~鵯越駅,鵯越駅~摩耶山掬星台,摩耶山掬星台~宝塚宝来橋南詰,と分けて歩いたりできる。 (2分割なら,須磨浦公園~市ヶ原,市ヶ原~宝塚,が一つの例となる)

 表を横に見ていくと,いろいろなデータが載っている。 各地点名の右にあるデータは,その地点のデータの場合もあるが,区間データの場合はその地点と1個前の地点の間のデータ(距離や高度差)を表している。 データを得るために使ったルートは,下記のルートである。


クリックで別サイトを参照します。別タブ(ウィンドウ)で開きます。地理院地図上に記載。拡大縮小が可能)

 データ表に戻ろう。
データの各欄の意味だが,緯度経度は,地理院地図上の点のデータからのものである。 標高も地理院地図のデータから得ている。 平面距離は,ルートデータの各点の間の距離を,緯度と経度からヒュベニの公式を用いて計算して,合算したものである。 沿面距離は2点間の平面距離と高度差から,ピタゴラスの定理で斜面の長さを求めたものを,ルートに沿って合算したものである。 今回の場合,宝来橋南詰までの行程だと,平面距離が 43.70 km なのに対し,沿面距離は 44.77 km となり,その差は 1.07 km であった。 平面距離と沿面距離の差については,以前六甲全山縦走路の距離についてにも書いたが, 沿面距離が一番短くなる場合は,中間点まで一定の傾きで登りそこから一定の傾きでゴールまで下ると考えた場合である。 今の場合は,43.5 km の間に約 3600 m 登ってほぼ 3600 m 下っているので,その長さ(沿面距離の考えられる最小値)は 44.1 km となる。 逆に一番長くなるのは,中間点まで水平に行き,そこで一気に 3.6 km 登り,再び 3.6 km 下ってから,水平にゴールに向かうケースである。 このケースは地面の中を進んで行くルートを仮想的に考えているので,実際には歩けない。 この場合の沿面距離は,43.5 + 3.6*2 = 50.7 km となるが,さすがにこれはかなりの過大評価である。 地理院地図から読み取った場合の沿面距離と平面距離の差 + 1.1 km は,最小値の + 0.6 km の2倍ほどであり,平面距離の約 2.5 % となっていて,まぁ,こんなものなのかな,と思っている。 時々,沿面距離と平面距離の差が,距離の 10 % を越えている評価をしている場合があるが(今の場合だと + 4.4 km 以上), よっぽどの場合でなければ沿面距離の計算を疑ってみたほうがいいと思う。

 次に累積上昇高度累積下降高度だが,これはルート上の2点間の高度差を,正の場合(登り)と負の場合(下り)を別々に合算したものである。 これによると,六甲全山縦走すると,ほぼ海面の高さから富士山の頂上近くまで登れてしまうことになる。 区間平面距離区間沿面距離区間上昇累積高度区間下降累積高度は,名前の通りであり, 各地点とそのひとつ前の地点の間の区間の平面距離,沿面距離,累積高度である。 合計区間高度差は,各地点間の区間上昇累積高度と区間下降累積高度を足したもので,結局はその区間の始点と終点の間の高度差になっているはずである。

 区間絶対値高度差は,各地点間の区間上昇累積高度と区間下降累積高度の絶対値を足したものであり, 登りや下りに関係なく,合計でどれだけの高度差があるかを示している。 ある地点間で大きく登って同じぐらい下ったとするとその区間の始点と終点の高度差があまりないケースも考えられるが, この区間絶対値高度差だと絶対値の和なので,それなりに大きな値になるはずである。

 傾斜区間平面距離は,考えている地点間を仮想的に水平移動部分と傾斜区間に分けて考えた時の傾斜区間に相当する平面距離である。 なんかややこしい表現となっているが,その区間の区間平面距離から水平移動部分の距離を引いたもの,である。 これは,区間平面距離を L0,区間沿面距離を L,区間絶対値高度差を H と書いた時に,
   x = (H^2-(L-L0)^2)/2(L-L0)
で求めたものである。

 従って,この傾斜区間平面距離 x で区間絶対値高度差 H を割ると,その区間の傾斜区間の傾き(傾斜のタンジェント(正接), 絶対傾斜比と勝手に命名してみた)を求められる。
   tanθ= H / x
この値は考えている区間の斜面の平均のキツさを表している。 H/x = 1 なら平均の傾きが45度を表している。 実際には H/x が 0.4 を越えている区間はかなり急な区間とみなせる。 また,H/x > 0.3 でもまあまあの傾斜がある,ということを意味している。 データ表で絶対傾斜比の欄を見ると,黄色やピンクに色付けされている。 このピンク欄が H/x > 0.4 であり,黄色欄が H/x > 0.3 である。 六甲全山縦走路を歩いたことがある人はわかると思うが,ピンク欄はいずれも六甲全山縦走路の中でもアップダウンがきつい区間であり, この絶対傾斜比 H/x が一つの指標になりそう,ということがわかる。

 最後に傾斜比率は,区間合計高度差 h を区間沿面距離 L で割ったもので,その区間の始点と終点の間での傾斜のキツさを示している。 多くの場合は区間の中に上りと下りの両方が含まれたり,水平区間がある程度以上含まれているため,この傾斜比率 h/L はあまり大きな値とならない。 この h/L が比較的大きな値(h/L > 0.2)となっているのは区間全体に渡って登りが続いたり,区間全体に渡って下りが続く区間である。

 この絶対傾斜比 H/x と傾斜比率 h/L を見てみると,一番激しいのが菊水山への登りというのがよくわかる。 地点の区切りを菊水山の急登区間の始点と終点に取っているから当たり前といえば当たり前なのだが…。 菊水山の登りの区間では,H/x がほぼ 0.5 となっている。これは平均の傾斜が30度となっていることを示している。 その斜面を高度差 240 m ほど登らないといけないのが,菊水山の登りとなっている。 菊水山の登りはほぼ登りっぱなしなので,傾斜比率 h/L も 0.34 と表の中で一番大きな値となっている。 かたや,天狗道は H/x が 0.366 と比較的大きな値なのに h/L は 0.043 となっている。 これは天狗道の前半で緩やかなルートがしばらくあったのちに急登して,さらにある程度下っているからである。

 この表を見ながら,六甲全山縦走路の全体を順に見てみよう。

(1) 須磨浦公園から神鉄鵯越駅の区間
  この区間は六甲全山縦走の最初のパートであり,いつも「準備運動」のつもりで歩いている。 しかし,準備運動とはいえ,12時間ペースだと3時間程度かかる距離であり,いつも鵯越駅を通過する頃には「準備運動のしすぎ」状態に陥っている。 この区間は細かく見ると,須磨浦公園から鉢伏山,旗振山,鉄拐山を経て高倉台まで,高倉台から栂尾山,横尾山,東山を経て妙法寺まで, 妙法寺から高取山を経て鵯越駅まで,という3つの山塊からなっている。 それぞれの山塊は最高点が標高が約 250m,310m, 330m とあまり大したことはないが,絶対傾斜比 x/L が黄色欄となっており,思ったよりも急なアップダウンが続くためにかなりハードな区間となっているのがわかる。 また,鵯越駅までで累積上昇高度が 1100 m を越えて,全体のほぼ 1/3 に達している。 さすがに「準備運動」というにはちょっと厳しい区間がこの最初の区間ということになる。

(2) 鵯越駅から摩耶山掬星台までの区間
  この区間は誰もが認める六甲全山縦走路のハイライト区間である。 この区間には,菊水山,鍋蓋山があり,さらに摩耶山に向かって,稲妻坂,天狗道,ゴロゴロ坂と登りが続く一番ハードな区間となっている。 データ表では,鵯越駅から菊水山の急登区間の入口まで,菊水山の登り,菊水山から天王吊橋への下り,鍋蓋山の登り,鍋蓋山から市ケ原への下り,市ケ原から稲妻坂の登り口まで,稲妻坂,天狗道,ゴロゴロ坂の登り,と分けている。いずれの区間も絶対傾斜比 H/x がピンク欄や黄色欄になっていたり,それに近い数値になっている。データで見てもやはりこの区間がとてもハードいうのがわかる。実際に歩くと 12 時間ペースの場合,最初の須磨浦公園から鵯越駅までの約 13 km が3時間なのに対して,この区間の 11 km 程度が4時間程度かかる。 この区間の中でも特にしんどいのが,菊水山の登り,菊水山の下り,鍋蓋山の登りと続く区間である。 この3区間は,登り,下り,登り,だが,いずれも H/x が 0.4 を超えていて,菊水山の下りが急なために登りで疲れた足を休めることができないまま,次の鍋蓋山の登り返しに向かう,という辛い区間である。そしてさらに市ヶ原から摩耶山までに結構な登りが続き,泣きそうになりながら歩く区間となっている。

(3) 摩耶山掬星台から東六甲縦走路分岐までの区間
  摩耶山掬星台は,須磨浦公園から摩耶山掬星台までの全行程 45 km のうちの 24 km が終わり,12時間ペースならこの摩耶山掬星台まで7時間が目安となる地点である。つまり,ここを過ぎるとやっと全行程の半分を過ぎたという感じの地点である。 累積の上昇高度も 2500 m を越えていて,全上昇高度 3600 m のうちの 70 % が終わっている。 そのため,摩耶山掬星台まで来れれば,宝塚まではなんとかなるっ,と思える地点となっている。 しかし,まだ距離にして 20 km,累積高度にして 1100 m が残っているので,まだ半分近く残っているというのが歩いた時の実感である。 データを見ると,摩耶山掬星台から東六甲縦走路分岐まで距離が約 10 km,累積上昇高度が 700 m ほどとなっている。 これは,三国池下へ向かっての登りと,六甲ガーデンテラスから六甲山最高峰へ至る区間の登山道でのアップダウン,そして六甲山最高峰への登りがあるためである。 いつも,この 700 m 分の登りが結構しんどい。 そのため,初めて六甲全山縦走する場合には,六甲ガーデンテラスから先は車道沿いを歩いてアップダウンを避けたり,六甲山最高峰をパスして高度差 50 m を減らしたりする人も多い。

(4) 東六甲縦走路分岐から宝塚宝来橋南詰までの区間
  ここは4つに分けた場合の最後の区間であり,六甲山最高峰近くから一気に宝塚まで下る区間である。 しかし,意外と細かい上りが残っている。 データ表によると,距離はほぼ 10 km であり,その間に合計で 400 m 程度登っている。 標高で 800 m 程度下ればゴールなのに,累積高度で 400 m も登り,その結果,合計で 1200 m 下る区間となってしまっている。 全体としては下り基調なのだが,もう後は下るだけだ,と思いがちなところに 400 m 分の登りはかなりしんどい。 おまけに 800 m ある下りが 1200 m になるので余計に膝にもきそうな区間である。 この表だとわからないが,水無山の前後に比較的な急なアップダウンがあり,船坂峠の手前に2箇所ちょっとした急な登りがある。 その後船坂峠に向かってグンと高度を下げる。 その後はダラダラと登ったり下ったりして,徐々に高度をさげていく感じである。 データ表を見ると,東六甲縦走路分岐から船坂峠までの区間を除いて,絶対傾斜比 H/x も傾斜比率 h/L 共にあまり大きな値は取っていない。 それでも絶対傾斜比 H/x は 0.2 を越えているので,緩やかな道を想像しているとかなり辛く長い道のりとなる。

 今回は地理院地図のデータから六甲全山縦走のデータを表にしてみた。 六甲全山縦走路を歩いたことがない人が見ても実感がわかないかもしれないが, 一度歩いた人の反省材料としてや,もう一度歩く人にはデータとして役に立つかもしれない,と思っている。

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